ド底辺な職場でアルバイトしたんでその話でもしよう

書きためてないけど
夏に短期のアルバイトを探していた俺は、週末のチラシで「食品仕分けの作業員募集!」という求人を見つけた

チラシには給与や勤務日程などが簡単に書かれているのみで
詳しくは面接にて、という感じだった
「食品の仕分け」は以前にもやった事がある。弁当の食材をラインで振り分けていく仕事だったが
なかなか楽だった。しかも今回は日給もあの時より高い。なので迷わず応募する事にした

派遣？

説明を聞いて予想していた仕事内容と違ったため迷ったが、隣の男は「大丈夫です」と即答した
やりとりを聞いてるとどうやらこの男、これまでもアルバイトや派遣を転々としていたらしい
今回もそのまま長期で勤める事も検討しているようだ
「>>1さんはどうでしょうかね?」とオッサンが訪ねてきた
思いの外に重労働ではあるが、お盆前だったので短期バイトの求人はほとんどが終わっていたし
今から別の仕事も面倒だと思い承諾した

訂正
?今から別の仕事も
○今から別の仕事を探すのも
こうして冷凍倉庫での仕分けバイトはスタートした
勤務時間は21時～6時の9時間(うち休憩1時間)、これが8日間続く
こんな重労働とは思っていなかったので、「夜勤でも余裕余裕( ´∀`)」と考えていたがこうなるとなかなか厳しい
しかし日給1万円は魅力的だ。8日間勤めれば欲しかったあれこれが皆買える

冷凍庫内はとにかく寒い。防寒仕様の作業着と手袋が配られるとの事だったが
この作業着というのが何ともチンケな薄い代物で、とても防寒の役割は果たせていない
長期のメンバーはみな着込みやマスクで各自防寒対策をしている
準備運動と注意説明の後、ラインごとに班に分かれて作業が始まった
フリーター、ﾀﾋんだ魚のような目をしたオヤジ、3ヶ月で前の職場を辞めたという元土方etc
とんでもないメンツだ。平凡な大学生の自分が何故ここに来てしまったのか分からなくなってきた
リーダーはここの正社員。元ヤン臭漂うあからさまに柄の悪い雰囲気だ
社員はみな若く18～20代前半だった。それより上がいない所から見て離職率はかなり高いのだろう

大まかな作業内容はこうだ
冷凍室から荷物を引き出し、それをベルトコンベアに乗せて最後に配送地域別に仕分け
トラックで出荷する。そして一段落ついたら再び冷凍庫から次の荷物を出す、の繰り返し
自分は主にベルトコンベアの工程を担当する
早速冷凍庫からカートで荷物を引き出されたのだが、重い。とにかく重い
冷凍食品と言ってもスーパーのあれではなく、ドラム缶いっぱいに入った鮮魚や大量のワインなど
本当に「冷凍された食品」だ。通販ショップの倉庫やホテルなどに卸すものらしい
実はこのセンターは佐○急便のクール便の中継所としても使われているらしく、むしろそちらの荷物が主だった
これについては面接の段階でも説明はなかった。某大手エレクトロニクスで使われる業務用機材など
もはや食品ですらない荷物も頻繁に現れる

荷物は複数のダンボールを括ってあるため重い上に非常に持ちづらく
クール便ゆえ荷物の中には割れ物や取り扱い注意の品も多い。ワインなどは梱包されていない
縛り付けてあるだけの荷物も多いので、次々冷凍庫から運ばれる荷物をスピーディーかつ慎重に運ばなければならない
無茶苦茶だ
取っ手のない荷物が出てきて悪戦苦闘していると、ガラの悪いリーダーにどやされた
「お前こんなんも出来ねーの!?使えね～なーったくよーあぁ＃％＄?!」
後半はよく聞き取れなかったが品の無い声で怒鳴る
向かいのオッサンは割れ物をうっかり落として「何してんの?馬鹿あ!?」と罵声を浴びせられていた
荷物の破損は厳しくチェックされており、社員は自分の監督するラインで破損が出るとお叱りを受けるらしい

どこの地方かだけ教えて

12時を回りようやく休憩が来る
狭い休憩室の中で、全員が仮眠を取ったりテレビを見てつかの間の休息を過ごす
休憩時間は30分しかないので、この間に夜食を取らなければ
焼きそばパンを食して自分も仮眠を取ろうとしたが、いい感じに眠くなってきたところで作業再開となった
後半は出荷前の地区ごとの分別作業に回された
荷物のラベルを見て荷物を床の上に分けて並べていき、たまったら荷台で
トラックの搬送口まで運んでいく
ここはもたつくとベルトコンベアの終点に荷物が突っかかってしまうのでより急がなければならない
リーダーはさっきとは別の社員。俺と同じ18歳らしい
「俺○高だったんだ～」と聞いてもいないのに去年廃校になった地元の高校出身である事を明かし
その後もバイクがどうのこうのと趣味について喋ってたが荷物を運ぶのにいっぱいでよく聞いてなかった

トラックが到着しシャッターが開いた時に入ってくる空気が気持ちいい
倉庫内から見る外の景色は、どこか遠い世界のもののように思えた
後半はトラックが到着するまで何度か待機時間が入るので、1時間に一回くらい10～15分の休憩が入る
何を出来るわけでもないが、冷凍庫から出て足を休められるだけで幸せだと感じていた
こうして荷物運びと待機を繰り返しているうち、朝が訪れついに6時となった
これで終わりだ、帰れるんだ…ろくでもない仕事だったがその時は味わったことのない達成感があった

ようやく帰れると思ったその時、「んじゃ掃除始めようか」という社員の声
あ　ん　だ　っ　て　?
すでに定時を過ぎているにも関わらず庫内の掃き掃除が始まった
この時間は業務ではないので時給は出ないらしい
庫内が終わると今度は休憩室や廊下の掃除機掛け、更には喫煙室の灰皿の片付けまで命じられる
センター内の掃除は普段も作業員が当番で行っているのだという

約30分の掃除を終え、ようやく帰路についた
全身クタクタで自転車をこぎ、自宅に着くとすぐに風呂を沸かし
食品の臭いを落とすとそのまま朝食も取らずに布団に入った
湯船に浸かったり布団に寝転んだりする事がこんなに気持ちいいなんて…
そんな事をぼんやり考えながら眠りについた
結局、バイトは3日目でやめてしまった
2日目は多少慣れてきて初日より負担が軽かったが、
帰宅後、疲れすぎておもらしをしてしまったらしい

起きたらズボンと布団に楕円形のシミが広がっていた
おもらしなんて幼稚園の時以来だ。さすがにこれは尋常ではないと思い
その晩電話で辞める事を伝えた。あの時センター長がつぶやいた「そうですよね…」という言葉が忘れられない
みんなもアルバイトをする時はブラック求人に気をつけてね!おわり

ブラックかもしれないが体力なさすぎじゃね